生きていることに喜びを感じたい

「お変わりありませんか」・・・日本人は、久しぶり会う人に挨拶をすることがあります。「お変わり」は「何か変わった出来事」という意味です。別に「悪いことあった?」と聞いているわけではないので、日々の出来事を聞いているのです。

吉田兼好徒然草」の冒頭にあるように、「祇園精舎の 鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす おごれる人も久しからず ただ春の世の夢のごとし たけき者も遂には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ 」

時の流れが止まらないように、すべてのものは同じ姿を止めていない。自分という身体を構成している60兆個の細胞は、絶え間なく死んだり生まれたりしています。すなわち昨日の私、今日の私も、明日の私も、みんな異なる私です。今、一瞬にも、私自身は変わりつづけているのに、いつも同じ私で変わらないと思い込んでいるのは妄想です。

昨年は、世界の大国の指導者が決まりました。アメリカ・ロシア・中国などです。また、お隣の韓国では、初めての女性大統領が決まりました。そして日本では衆議院選挙で自民党阿倍政権が誕生いたしました。

シリア・イラクなど、中東諸国は内戦は収束する兆しもありません。今日のニュースでも、多くの死傷者が出ているとの報道があります。一刻も早く期待したいものです。

そして、欧州の信用不安に始まって、世界的不況は長引いています。解決するには、思い切った変革の策をとることで活路が開けることがあります。困難な見通しを悲観するより一歩を踏み出せば、暗闇の隘路を抜け出て希望の光を見いだせることがあります。

私たちは、今、という時に生きています。けれども、それは一瞬のことで、そう思った時にはすでに過去です。まさに生きている今とは、瞬きの刹那にすぎない。明日のことだと思っていることが、もうその時になれば今です。未来はすぐに今になり、そして過去になってしまいます。

ノーベル生理学賞を受賞された山中伸弥教授が、授賞式から一夜明けた朝、ストックホルムで記者会見をされた。「ノーベル賞の受賞は、もう過去のことです。今日は科学者として仕切り直しの朝だと感じている」と、「iPS細胞を創薬に役立てるという応用に向けて、これまで以上に力を入れていきたい」と抱負を語られました。そして「研究はマラソンとよく似ている。今回は、栄養補給のような意味があった」と話されました。

無常迅速で時はどんどん流れていきます。ところが人は今がよければと、のんびりと貴重な時の流れを浪費していないでしょうか。過去にこだわることなく、いつも未来志向で今を生きる。今を生きることが過去を生きることであり未来を生きることです。この一瞬の命の輝きに心をときめかせ、今、生きていることに喜びを感じたい。