北朝鮮の人工衛星のこと

国際的大きな話題となった、北朝鮮人工衛星の打ち上げは、失敗した。北朝鮮の国営朝鮮中央通信は13日、同日打ち上げられた人工衛星は軌道投入に失敗したと報じた。制作費が8億5000万ドル(約689億円)という。

食糧不足が伝えられている北朝鮮で、多額な費用をかけて打ち上げは、ただ国民を不幸にするばかりである。指導者の政策転換を考えていくべきだ。

北朝鮮人工衛星打ち上げについては「騒ぎすぎの日本のメディアという批判」もあるようだが、今回の打ち上げ失敗で、新聞各紙は社説で一斉に書いている。

朝日新聞・・・「北朝鮮ミサイル―発射強行に抗議する」
北朝鮮が、事実上の長距離ミサイル実験だった「人工衛星」の打ち上げに失敗した。多数の残骸が、韓国西方の黄海に落ちたという。幸い日本を含めて被害はないようだが、危険きわまりない暴挙である。

中国やロシアも含めて各国が中止を迫っていた。発射は明らかに国連安全保障理事会の決議に反する。実験の強行に強く抗議する。

発射基地の建設と「ロケット」本体の製造などに、8億ドル以上をかけたという推計も韓国政府内にはある。140万トンのコメを買える額だという。飢えた国民よりも、3代目の金正恩氏の新体制づくりを優先させた愚行というしかない。

読売新聞・・・『「衛星」発射失敗 強固な北朝鮮包囲網の構築を』
「追求すべき安保理決議」・・・失敗はしたものの、「弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射」も北朝鮮に禁じた国連安全保障理事会決議への明らかな違反だ。決議を愚弄する北朝鮮の行為は、決して看過できない。

「核ミサイルの断念迫れ」・・・北朝鮮は今回、外国の専門家や記者団を発射基地や管制センターに案内するなど、「透明性」の演出に努めてきた。初めて発射の失敗も認めた。「衛星」発射がミサイルではなく、「平和利用」だと正当化したいのだろう。

「日米共同対処が重要だ」・・・自衛隊は3月末から、東シナ海イージス艦沖縄県などには地対空誘導弾部隊を配備した。二段構えの迎撃態勢は、万一の事態に備えたものだった。

沖縄県自治体と協議・調整した経験も踏まえて、今後の日米の共同訓練や対処計画の向上につなげることが重要だ。全国瞬時警報システム(Jアラート)などの自治体への速報体制にも不備が判明した。防災無線の整備率を高めるなど、日本全体の危機管理体制の強化が急務だ。

毎日新聞・・・「北朝鮮ミサイル失敗 安保理で厳正な対応を」
北朝鮮人工衛星の打ち上げだと主張し、国威発揚の成功を確信していたらしいミサイル発射は、朝鮮半島西方の黄海上空で機体爆発、空中分解という無残な失敗に終わった。

免責の余地はない 北朝鮮が衛星と主張できる物体を打ち上げようとしていた可能性を完全に排除することはできない。しかし目的や成否のいかんにかかわらず北朝鮮は免責されない。

09年の国連安全保障理事会の決議1874は北朝鮮に「いかなる核実験または弾道ミサイル技術を使用した発射」も行わないことを求めている。

そして北朝鮮が衛星用と主張した「ロケット」は、日本のほぼ全土を射程に収め、実戦配備もされている中距離弾道ミサイル・ノドンを4基組み合わせて1段目の推進体としたものだ。専門家の判断である。

この点だけ見ても文字通り「弾道ミサイル技術を使用した発射」だった。明白な決議違反である。