深刻な孤立死の問題

最近、「餓死」、「孤立死」といわれる悲惨な事件の発生のニュースが多い。「餓死」「孤独死」は、本来、あってはならない事件だが、最近になって突然発生するようになったものではない。

しかし、今のような事態が改めて衝撃的なのは、短期間にあまりにも多数の「餓死」「孤独死」が集中して発生していること、また、1人だけではなく、2人以上の家族がともに生活されているにもかかわらず、そのご家族が相次いで亡くなっているところが、一層深刻な事態であることを物語っている。

このような「餓死」「孤立死」がなぜ、多発しているのだろうか、報道された内容を見ると、実は、それぞれの事件毎に、さまざまな要因がからみあっていると考えられる。

事件の原因は、家族→孤立状態にある高齢者・高齢夫婦の急増、地域社会の変化、社会保障の劣化、そして、何よりも大きい原因は、貧困の拡大がある。

地域社会の変化は、高齢者が多い地域として、いわゆる過疎地域とか限界集落と言われる地域とともに、東京都や大阪市などの大都市地域があげられる。

過疎地域とか限界集落と言われる地域では、地域の関心や見守りが、ある意味で、比較的高いレベルにあるため、「餓死」や「孤立死」の発生は、今回は、それほど問題になっていないと、いえども、大都市地域の社会的つながりの喪失や「きずな」がなくなる状況は、極めて深刻である。

社会保障の劣化は、高齢や障がいに対する年金の額が少なく、失業した場合でも、失業給付を受けることができる人が少なく、国民健康保険でも、保険料滞納世帯が2割に上るという。住民の生活を支える社会保障の仕組み自体が崩壊の危機に瀕している。

最も大きな、そして深刻な原因となっているのは、「貧困」の広がりである。貧困率が平成21年には16%と最悪の数字を示している。ほか、生活保護制度の利用者が過去最多の205万人となった。

住民の多くの人が、何らかの生活上のつまずきがあれば、「餓死」や「孤立死」に直結しかねない生活状況となっている。

行政だけでなく、地域包括支援センター、民生委員やボランティア、さらには、民間の事業者が有機的に結びついた、地域の総合的な「見守り」のシステム化も重要である。