年金支給68歳に引き上げ案

厚生労働省は、年金の支給開始を68歳に引き上げる案を社会保障審議会年金部会提示した。厚生年金の支給開始年齢は現在、65歳まで段階的に引き上げられている途中にある。民主党政権が6月に「税と社会保障の一体改革」で示した「68〜70歳への引き上げ」に沿ったもので、高齢化で悪化が見込まれる年金財政の改善がねらいだが・・・

高齢者の働く場が問題で、確保が前提であり、国民のからは、反発が予想され審議は難航するだろう。この問題は避けて通れない問題と思うが、支えている若い人、支給されて生活している人、高齢者でも働いている人など、バランスの取れた仕組みに配慮が大事だ。

今朝の新聞で朝日・毎日がこの問題を取り上げている。朝日新聞社説「年金支給年齢―引き上げ論議は丁寧に」毎日新聞社説「年金支給開始年齢 雇用の確保が前提だ」

朝日新聞社説・・・高齢化・少子化が進むなか、なるべく多くの人が働き、社会を支えるようになるのは望ましい。その意味で、引き上げは選択肢になりうる。 だが、高齢者が働ける場を確保できないと、生活に困る人を増やすことになりかねない。

支え手世代は「なぜ自分たちだけが割を食うのか」と受け止めるだろう。逃げ水のように支給が遅くなる分、受け取る金額が減ると感じるのが自然だ。

年齢引き上げが、年金財政や将来の年金にどのような影響を及ぼすのか。具体的な制度設計をもとに試算をして、議論を深める必要がある。そして、実施するなら、世代間で不公平が生じないよう、できるだけ早く進めるほうが望ましいだろう。

支給額の大幅な減額は高齢者の反発を招くため、必要な額の引き下げが行われず、年金が高止まりしている実態は看過できない。このままだと、賃金が下がって保険料収入が少なくなる分、財政が悪化し、将来世代が受け取る額が下がってしまう。

年金を受け取る側と支え手とのバランス、高齢者が働く場の確保などに目配りした包括的な議論を期待したい。

毎日新聞・・・現在、女性は世界一の長寿で86歳、男性も79歳。今後も延び続け、高齢化のピーク時には女性は90歳を超える。雇用や年金を長命社会に見合ったものにするのは当然だ。

ただ、支給開始年齢を引き上げただけでは、定年後に収入のない人が続出する恐れがある。高年齢者雇用安定法では企業に対して、(1)定年の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年制度の廃止−−のいずれかの措置を取ることを義務付けている。

ほとんどの企業が年金をもらえる年齢まで雇用確保措置を実施しているが、希望者全員が65歳まで働ける企業は46%、70歳まで働ける企業は17%にとどまっている。年金支給開始年齢引き上げを実施するためには、高齢者雇用のさらなる拡充が不可避だ。

また、現在60歳以降も働いている人は、賃金と年金の合計額が月28万円を超えると年金が削減されるが、これでは老後も働き続ける意欲がわかないだろう。このため厚労省はこの「在職老齢年金制度」に関して60〜64歳の減額基準を緩める案を示した。

我が国の高齢者は勤労意欲が高く、「70歳を超えても働きたい」「働けるうちはいつまでも働きたい」という人が全体の6割にも上る。こうした意欲に応え、年金受給から労働の継続へと老後の生活を変えていくためにも必要な措置だ。

一方、若い世代にとっては保険料を払う年月が延び、年金をもらえるのがさらに遠のくことに不公平感を抱く人も多いに違いない。支給開始年齢の引き上げとともに、現在年金を受給している世代が痛みを分かち合うことも避けられまい。高所得者の年金減額や課税の強化、デフレ下では物価に連動して引き下げる措置も検討すべきだ。