年金減額はやもう得まい

諸般の事情で年金の減額はやも得まい。年金の物価スライドは、当初より決まっていたものだが、物価が上がったときには支給金額は上がり、下がったときにはそのままは、受給者はありがたかった。

しかし年金問題が資金の問題で、行き詰ってしまっている。そこで元の仕組みに戻そうと言うのだ。それに反対している多くの声がある。

理由は支給を減額すれば、景気は悪くなるという理由からだそうだが、やはり少子高齢化は進み、次世代以降の年金負担額を維持するのは無理があると思う。

したがって政府が検討を示している、段階的に正規の支給額を、現状の物価に合わすということはやも得ない。朝日新聞の社説は納得できる。

朝日新聞社説・・・「年金の減額―本来の水準に戻そう」

年金が減るという話は、お年寄りにとってつらい。だが、ここは子どもや孫への影響に思いをめぐらしたい。小宮山厚生労働相が年金の支給額の引き下げを検討する考えを示した。今年度の年金は本来より2.5%分多い。それを段階的に戻そうというのだ。

問題の始まりは自民党公明党が政権の座にあった99年だ。この年、消費者物価が少し下がった。それに応じて、翌00年度の年金を自動的に下げるのが本来のルールだった。

ところが、年金を減らせば、景気をさらに悪くするといった理由から、年金額を据え置く特例をつくった。特例は02年度の年金まで3年連続で適用された。選挙で年金生活者の反発を買いたくないという配慮もあったようだ。

据え置きにあたっては毎回、法案が出され、国会は全会一致で可決してきた。据え置いた分は、物価が上がったときに、年金額を引き上げないという方法で解消するはずだった。

ところが、物価が下がるデフレ傾向が続き、実際の年金額と「本来の水準」のギャップは埋まらないままだ。 政府の政策仕分けでは「累計7兆円規模の年金のもらいすぎがある」と指摘され、その解消が提言された。

私たちも、解消を急ぐべきだと考える。民主党内から反発の声が出ているが、乗りこえなければいけない。そうしないと将来世代にツケが回る。少子化で保険料を払う現役世代は減っている。一方で、長生きする人が多くなり、年金の支給額も増えている。

このままでは現役世代の負担が重くなりすぎるので、保険料の上昇は2017年度に歯止めがかかる。年金を払うために使うパイの大きさに、一定の枠がはまることになる。

さらに、物価上昇時には「マクロ経済スライド」という仕組みが設けてある。現役世代の減り方や寿命の延びなどに応じて、年金額を抑える制度だ。

しかし、いまの年金を「本来の水準」にまで下げてギャップをなくしたうえで、物価がある程度上がらないと、この仕組みは動かない。この決まりを見直して、物価が下がった時にも発動できるようにしないと、将来世代の年金がさらに減ってしまうことになる。

年金にしか頼れないお年寄りの不安はよくわかる。だが、いまの子や孫世代も、将来の年金に大きな不安を抱いている。お互いを思いやる姿勢で、この問題を考えたい。