野田首相の始めての党首討論を聞いて

野田首相が初めて党首討論の臨んだ。テレビの実況中継を見て、自民党の谷垣総裁との討論では、政策論の違いが見えなかった。

国の将来のビジョンを突っ込んで話し合うという中身のある意見交換がなかったのがもの足りなかった。谷垣総裁の、足の引っ張りが、相変わらず目立ったように思えた。

確信に触れた中身のある政策論を期待したが、これでは政治離れ「誰がやっても同じ」という有権者をひきつける魅力は感じ取れなかった。

新聞各紙社説
朝日「党首討論―2大政党の近さ鮮明に」

主なテーマは環太平洋経済連携協定(TPP)と、社会保障と税の一体改革だった。ともに国の将来を左右するテーマであり、中身の濃い政策論争を期待したが、議論はかみ合わなかった。

何より、民主、自民の2大政党の間の本質的な違いが見えなかった。谷垣氏の主張はTPP参加や消費増税そのものに対する異論ではなかった。むしろ、政府・民主党と方向性に大差はなく、具体策づくりで協調する余地があるように見えた。

そもそも、経済連携も財政の立て直しも、どの党が政権に就いても向き合わざるを得ないのは明らかだ。こんな状態のまま総選挙に突入しても、有権者は違いがわからず選びにくいだろう。

きのうの党首討論は改めて、2大政党の近さを示した。お互いに、もっと一致点を見いだす努力ができるはずだ。

読売「自民は消費税の協議に応じよ」

野田首相の質問に、的確に切り返せないようでは野党第1党の党首として力不足だろう。

消費税を含む抜本的な税制改革は、麻生政権が税制改正関連法の付則で道筋をつけたものである。自民党は消費税率の10%への引き上げを超党派の会議で検討することも参院選で公約している。

民主党政権公約マニフェスト)に消費税に関する記述がないことを理由に、谷垣氏が衆院解散を求めたのも大いに疑問だ。

毎日「党首討論 谷垣氏が守勢に見えた」

主要政策をめぐる発信力に両党首はこれまで乏しかった。消費税について首相は自民の参院選公約が税率10%を掲げている点を指摘、「われわれが素案をまとめればぜひ協議に応じてほしい」と谷垣氏に求めた。

谷垣氏は民主党による税率引き上げは政権公約違反として、法整備前衆院解散で民意を問うよう求め、対決姿勢を鮮明にした。だが、与野党協議そのものまで拒むような論法では説得力を欠く。

今回の討論が注目されたのは単に初対決というだけでなく、大阪ダブル選挙で既成政党が埋没ぶりを露呈した直後だったためだ。両党首は政治家の発信力という点で橋下徹大阪府知事にすっかり主役を奪われたような感すらある。

かつての「小泉流」をほうふつとさせる大阪都一点張りの橋下氏の劇場型戦法には危うさもあり、国政にそのまま応用すべきものでもない。だが、わかりやすいメッセージが若者や無党派層の関心を呼び起こした事実を中央の政党は重く受け止めるべきだ。

行き過ぎたヤジに議場が覆われたのは残念だが、首相は討論で最低保障年金も含めた改革法案を13年度までに提出する方針も表明した。税と社会保障の一体改革へ国民の理解を得る先頭に立つ気構えを示す時だ。