穏やかな人生を送る

林芙美子の詩に「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」があるように、生きとし生けるものはみな、命が輝いているのは一瞬のことで、やがて精彩を失い、衰弱して動物は死に、植物であれば枯れてしまう。

年をとってからの病気・怪我などをすると、なかなか元の元気な姿に戻らない。自分はすっかり精彩を無くしてしまった、こんなはずではなかったのに、もうそんな歳になったのか、病のせいだろうか、などと人は嘆く。健康でいつまでも若くありたい、歳はとりたくない、死にたくないという願望があるから、思い通りにいかない現実に嘆き悲しむ。

人と人との関係においては、たとえ親子であろうと、夫婦であろうと、自分の思うように人は応じてくれない。好きなお互いどうしでも気に入らなくなると、愛する気持ちが憎しみに変わる。

人生のパートナーにめぐり会えたと喜んでも、やがて冷めると別れが訪れる。所詮誰でも独りぼっちである。

悩んでも、嘆いてみても、生老病死は人の自然な姿である。そして、人は生まれつき独りぼっちであるが他の人との関係なくしては生きられない。ところが肉親であっても、親しい友人であっても、自分の思い通りにいかないから、人間関係で悩み苦むのである。

人はモノやお金に頼ろうとするから、頼るほどに欲のために悩み苦しみが増してくるのだ。欲望が消えることはない。

こだわらない、とらわれない ものごとに執着しない、少欲知足、そんな心で生きていけば、悩み苦しみとも上手につきあうことで、穏やかな心で人生を送ることができる。