東芝北九州工場の閉鎖のこと

経済、文化、政治、環境問題など人類の活動とその影響が、国家や地域の境界を超え、地球規模で一体化していく、いわゆるグローバリゼーションの現代社会である。地球規模で産業経済の潮流見極めていかねばならない時代である。

日本の企業も途上国の追い上げなど、生き残りは厳しい環境にある。世界規模の経済産業の流れの中で、グローバル化した価値判断が求めらると思う。

私の40年間勤めさせていただいた東芝が北九州工場を閉鎖方針をきめたという。それも、経営者の変化・改革の価値判断の結論だたと思う。

西日本新聞社説・・・「東芝北九州閉鎖 変容できるか 衰退するか」

環境の変化に合わせて変わらなければならない。企業も、地域も。立ち止まっていては衰退するだけというわけだ。東芝が北九州工場(北九州市小倉北区)などの閉鎖方針を発表した。大分工場(大分市)の生産も一部縮小する。

来年度上期に半導体事業を再編し、北九州工場の従業員約530人、大分工場の約500人を他工場に配置転換する。大手電機メーカーの九州にある生産拠点の縮小、閉鎖が相次いでいる。縮む国内市場に加えて円高が拍車をかける。

その中でも、東芝の北九州、大分両工場は、九州で半導体産業が根付くのに大きな役割を果たしてきたといえる。

1967年に三菱電機が熊本工場(熊本市)で集積回路(IC)の組み立て生産を開始した。3年後の70年、東芝大分工場、熊本市の九州日本電気(NEC)が、それぞれ操業を開始した。東芝北九州工場でも同年、IC生産を始めた。

これらが「ICアイランド九州」「シリコンアイランド九州」とも呼ばれる産業集積の足場ともなったのだ。いま九州の集積回路製造業の製品出荷額は年間約1兆6千億円で全国の3割を占める。

その拠点にも再編の波は容赦なく及んできた。ICアイランド九州が大きな節目にあるとあらためて実感させられる。

ただ、兆しはあった。流れは感じられた。東芝は2年前に北九州工場でのシステムLSI(高密度集積回路)の生産を大分工場に移管し、北九州工場は発光ダイオード(LED)などに特化させた。

東芝はさらに、福岡県宮若市のグループ工場を閉鎖、今年4月には、2008年にソニーから購入した長崎県諫早市のLSI生産工場をソニーに売却した。

東芝半導体事業はフラッシュメモリーなど競争力が高い分野に急速に絞り込まれている。海外勢との競争激化で、背に腹はかえられない状況なのだ。

だが、工場がなくなる北九州市にとっては打撃が大きい。半導体産業に続いて九州で集積が進む自動車産業の二つを生かし、同市はカーエレクトロニクスの拠点となるべく計画を進めてきた。

LED関連技術の研究開発を支援する事業も行ってきた。東芝の存在があればこそで、話が大いに違ってくる。去られる側は恨みの一つも言いたくなる。ただ、再編の見直しは難しかろう。

閉鎖、撤退する企業がある一方、生産増強を図るメーカーもある。キヤノン富士フイルム太陽光発電昭和シェル石油などが大型投資を行ってきた。

地元で新産業や企業が育てば雇用の心配はないが、現実はそう簡単ではない。有望企業、成長業種をいかに誘致できるかが、雇用創出の鍵になる。誘致をめぐる地域間競争は激しさを増している。

だが、国内外のライバルとの誘致合戦を勝ち抜くしかあるまい。自分たちの強みを生かし、魅力を高めた産業政策になっているか。九州の自治体はいま一度見直して、変化に対応する必要がある。