季節を立ち止まってみる

季節の巡りは、早いものです。記録的な暑さだった夏も10月に入ると、街路樹が色づき、山々の錦秋の美しさに見られる時期になりました。

さーっと吹きぬける風に、目の前の木々がはらはらと木の葉を散らせていきます。しみじみとした感傷に思わず誘い込まれていく、そんな気持ちになってしまいませんか。

また菊の香りが、心を落ち着かせ、穏やかな気持ちになれる。秋の風景はさまざまな心の動きのようです。そして街を歩いていると、甘い匂いが漂ってきて、淑やかな金木犀の木を探す・・・

なにげないことですが、秋の日のこの時期に、もの思いにふけることがあるでしょう。それは過ぎし日のことであったり、ふと感じる自分の老いの寂しさであったりです。もの思いにふける秋は、未来への希望ということより、どちらかといえば、過去への回想になってしまい勝ちです。

熱く燃えた夏の日のことや、遠く過ぎ去った、ずっと昔の青春時代をふと思う人もあるでしょう。また北風の冷たさに思わず襟をよせ、身を震わせてしまう、そんな秋の日もあります。そして木枯らしが吹き始めると、厳しいこの冬の先行きに思いをめぐらすのもこの時期です。

季節の移ろいに我が人生を重ね合わせて、物思いにふけるのも、たまにはいいのかもしれません。季節感を忘れかけてしまう、慌しい日常生活の中で、立ち止まって自分を見つめることも大事だと思います。