デフレ脱却のシナリオ

自民党が選挙で大勝したのは、長引く不況で、景気をなんとして欲しいとの国民の声があった。経済対策で、物価上昇率2%の目標掲げたことだ。さっそく日銀の白川総裁に申し入れたが、どうも簡単なようなものでないようだ。

素人の私でも、日銀の独立性の維持は大事で、政治家の意見で左右されるのは、もっての外だと思う。国の借金が1000兆円という莫大なものとなって、これ以上際限なく借金を重ねてしまったら・・・劇薬処方?で副作用に心配は・・・

学習院大学経済学部岩田規久男教授は・・・「日銀が変わったというメッセージが市場に伝われば、間違いなくインフレ期待は高まる」と早期のデフレ脱却に期待感を示す。

来春に任期を迎える白川方明総裁と2人の副総裁の後任に「インフレ目標推進派」を送り込んで最高意思決定機関である政策委員会で多数を握り、「新生・日銀を強くアピールすべき」と考えている。

一方経済評論家の池田信夫氏は・・・これほど安倍氏インフレ目標にこだわるのは、来年夏の参議院選挙に負けると、5年前と同じように退陣を迫られるためだろう。自民党の集票部隊である土建業者に公共事業を発注するためには、国債を大量に発行するしかない。第2次安倍内閣で副総理兼財務相になると予想されている麻生太郎氏は「政府はいくら借金しても大丈夫」というのが持論で、来年度の当初予算も国債の新規発行枠44兆円をはずして100兆円を超える大型予算を組む方針だ。

要するにインフレ目標というのは目くらましで、本音はバラマキ公共事業のための財政ファイナンスなのだ。しかし日銀の国債保有高は100兆円を超えた。今は超低金利なので何も起こらないかもしれないが、日銀が大量に国債を買うと市場に「日銀はお札を刷って財政赤字を埋めているのではないか」という疑念をもたれ、国債が売られると長期金利が上昇(国債価格は下落)してインフレが起こり、それによってさらに金利が上昇する・・・というインフレスパイラルに入るおそれがある。

安倍氏は「インフレが2%になったら日銀が政策金利を上げればいい」というが、スパイラルに入ると金利上昇で銀行が含み損を抱えるので、政策金利を上げるとさらに損失が拡大する。日銀のバランスシートが悪化して100兆円以上の国債を売却したら、国債市場は崩壊して邦銀の多くは債務超過になるだろう。「ここで止めよう」と思った所では止まらないのだ。

政治家が中央銀行に金融緩和を求めるのは万国共通である。財源がなくなったとき中銀にお札を刷らせる誘惑に負けることも多いので、途上国では財政ファイナンスによるインフレは日常茶飯事だ。しかし日本でそんな政策をとると、1000兆円を超える政府債務という「時限爆弾」が爆発して、日本経済は粉々になるだろう。

各国でインフレ目標や政策協定(アコード)が結ばれているのはこういう政治的圧力を防ぐためであり、中銀を政治家の貯金箱に使うために政策協定を結ぶなどというのは世界の笑いものだ。日銀の独立性は、安倍氏のような政治家から通貨の信認を守るために定められているのである。

ロイターニュース ポリシーチーム記事・・・ポイントはこうした公共事業の増加により、財政再建のために民主党政権で決めていた歳出(基礎的財政収支対象経費)71兆円、新規国債発行44兆円という枠を超える可能性があることだ。甘利政調会長は「(71兆円、44兆円などの数字で)手足を縛って難局を泳ぎきれというのはどういうことか。この2、3年は弾力的な経済財政運営することを決めないといけない」として、こうした数値にはこだわらずに政策を進める考えを示している。

ただ、日本は2015年度に基礎的財政収支の対GDP比赤字半減を目指す財政健全化目標を国際公約として示している。自民党衆院選の公約に同じ目標を掲げたが、財政再建を棚上げしての財政拡張政策はその後の財政健全化に大きな障害となる可能性もある。