生まれた後の人生が重要

生まれたばかりの赤ちゃん・・・母親のオッパイを探し求めるのです。穢れもなく、感情もなく、お腹がすけば泣き、お腹一杯になれば眠ります。ただ本能だけで生きています。

そして両親の遺伝子を引き継いでいるのです。遺伝子は、私たち生物にとって、きわめて重要な「条件」であり、生まれつき持つ「環境」であると私は考えています。しかし、それはあくまで出発点であり、「生まれた後の人生」をどうするかは、もっと重要であると思います。

11月のニュースで、赤ちゃん取り違え事件がありました。

「新生児取り違え:60歳男性「生まれた日に時間を戻して」・・・訴訟:新生児取り違え、人生も逆転 生活保護で中卒後就職←→大学進学 60歳男性訴え、3800万円賠償命令(毎日新聞 2013年11月27日 東京朝刊)

東京都墨田区の病院で60年前、出生直後に別の新生児と取り違えられた都内の男性(60)が人生を狂わされたとして、病院側に約2億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、約3800万円の支払いを命じた。

男性は、中学卒業と同時に町工場に就職。自費で定時制の工業高校に通った。今はトラック運転手として働く。取り違えられたもう一方の新生児は、4人兄弟の「長男」として育ち、不動産会社を経営。実の弟3人は大学卒業後、上場企業に就職した。

兄弟で「長男」だけ容姿が異なることから、3人の弟が2009年、検査会社にDNA型鑑定を依頼。血縁関係がないことが確認された。その直後から実兄捜しが始まり、病院の記録を基に11年、男性を捜し当てた。

「そんなことあるわけがない」。男性は取り違えの可能性を告げられた時、最初は信じられなかった。だが、育ての母親が兄たちと足の指の形が違うことに触れ「誰に似たんだろうね」と笑ったのを思い出した。

今は実の弟と月に1度飲みに行き、育った家庭の兄の介護をする日々だ。だが、実の両親との再会はかなわなかった。「何もお返しできなかった。生きて会いたかった。写真を見ると涙が出る。

「違う人生があったとも思う。生まれた日に時間を戻してほしい」・・・判ります。

判決は「出生とほぼ同時に実の両親と生き別れ、その後、両親が亡くなって交流を永遠に絶たれてしまった衝撃と喪失感は償いきれるものではなく、男性の無念さは大きい」と述べていると言うことです。

そして、何らかの事情により家庭での養育が困難又は受けられなくなった子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度で、「里親制度」もありますが、現在の生活環境の中で生きるしかないと思います。